ルールづくり
「ルールをどうやってつくったらよいかわかりません」
「どのようなルールにすればよいかわかりません」
よくある質問です。
ルールづくりの流れとポイントをお伝えします。
ルールづくりの流れ
- 目的・目標明確化
ルールをつくる目的は「子供を守るため」です。そのために必要なことをルールとして決めることがポイントです。
目標は家庭環境と子供の生活や利用実態に即した内容とすることが必要となりますので、「2.情報整理」と共に考えていけばよいです。
基本は目的をぶらさず、目的からブレイクダウンできる目標とすることです。
ルールをつくることが目的ではありません。 - 情報整理
ルールが必要な理由と制限する必要のある機能を整理します。
各家庭の教育方針(保護者の考え)、機器の普及状況や流行りのサービス、トラブル発生状況の実態、子供の性格や興味、ICTリテラシー、生活環境により定めるルールの内容は変わります。
それぞれを項目として整理することで、どのようなルールが必要なのかということが見えてきます。同時に子供の興味領域を知る機会にもなりますので、子供とコミュニケーションを取る機会と捉えて活かしてください。 - 対話・調整
子供との相互理解と建設的な話し合いをすることが実効性のあるルール作りにつながるため、子供との対話や調整という作業は重要になります。
前提となる基本条件やルール設定の目的などは説明し(小学校高学年であれば概ね理解できます)、身を守るためのフィルタリングの設定(利用)やこれから決めるルールの定期的な見直しを前提として、子供との対話の中から今、必要なことを洗い出します。
子供との対話に際し、大人の姿勢・心構えとして大切なことは、「傾聴スタンス」、「常識を疑う」、「共同作業(親子一緒)」の心構えです。 - ルールの作成
ルールをつくる際には、利用シーン(6+1)に応じた具体的なルールを作成することが大切です。
自治体や学校単位で設ける「共通ルール」には限界があること理解し、家庭の事情を勘案した家庭の個別ルールで子供の安全を守れるようにします。
ルールづくりのポイント
ルールづくりにおいて「利用シーンの6+1」を意識するとルールづくりがしやすくなります。
「使っても良い○○(下記の①〜⑤)」、「使ってはいけない○○(同)」という形で考えるとイメージを持ちやすいと思います。
①時間 = いつ・何時
②場所 = どこで
③相手 = 誰と
④機能 = どのような(アプリケーション・サービス等)
⑤使い方 = どのように
⑥緊急時 = どうする(緊急・トラブル時の相談者・対応法)
+1 = ペナルティ = ルール違反時にどうする
成長に応じて見直しをする前提ですので、現時点での子供の知識やリテラシー(どの程度使いこなせるか)で必要なルールを考えることがポイントです。
小中学校の保護者向け講演でお伝えしていることですが、大人も決めた方が良い人も大勢いますけどね・・・。
参考にしていただければと思います。
常識は非常識
「大人の常識、子供にとっては非常識」
教職員研修や保護者向けの講演会で必ずお伝えしていることです。
「自分が学生(子供)の頃は・・・」この言葉が出てきたら危険信号です。
社会は変化しています。その変化を無視して過去の自分の体験や経験からだけ物事を見てしまうと、コミュニケーションギャップが生じます。そして判断を誤ります。
大切なのは今、目の前の現実が何かということです。
ビジネスにおいても正しい答えを導き出すには「ファクトベース」、事実に基づいて考えることが大切であるという考え方がありますが、情報モラルやリテラシー教育においても全く同じです。
今の子供社会の現実を見ずに、数十年前の自分の子供時代の常識から考えても実態に即した答えが出てくることはありません。
トラブル発生時の的外れな対応をしている学校などは、恐らく自分たちの常識でやっているのでしょう。そのような対応では炎上しても、トラブルが拗れても仕方がありません。しかし、そのことで子供を死に追い詰めたり、将来にわたって心理的障害を負わせてしまう場合は、仕方がないでは済みません。いじめ問題で呆れた対応をする学校などは典型です。
まずは一旦、自らの常識という殻を壊し、今、目の前で何が行われているのか、どのような構造になっているのか、どのような人間関係になっているのかという現実(事実)を真摯に見ることです。そこに自分の思い込みを入れる余地はありません。
「常識は非常識」であるという前提で向き合うことが、トラブルを拗らせたり複雑化させない基本的な対応の一つです。
大人も子供も同じ
スマートフォン(以下「スマホ」)が日本で一般的になったのは国内3キャリアからAndroid端末が複数発売され始めた2010年からです(iPhone 3Gの日本発売は2008年〜)。
スマホの世帯普及率は70%超、高校生の携帯・スマホ保有者のうちスマホ保有率が9割、20-30代も8-9割と言われる普及状況にありますが、6-7年での急激な普及により、誤った使い方や危険性を学ぶ機会ない中で利用者が急増している状況です。
「子供向けにスマホの危険性を教えて欲しい」という要望がありますが、子供だけではなく、大人も実はよくわかっていないという実態が大きな問題です。本来であれば、子供達に誤った使い方や危険性を伝えるべき立場の大人が、誤った使い方や危険な使い方をしているからです。子供たちは大人のそういう行動をよく見ています。
事件事故のニュースが流れていると何となく「気をつけよう」とは思うことがあったとしても、まさか自分がやってはいけない見本だったという笑うに笑えないこともあります。
子供だけではなく大人も同様のリスク環境にいることを理解し、子供と一緒に学ぶ姿勢で向き合うことが予防や問題解決の第一歩になります。
全ての問題は人に帰する
携帯・スマートフォンは通信やコミュニケーションのための道具であり、手段です。
問題が発生すると道具そのものを悪者扱いする風潮がありますが(特に報道において)、問題の本質はそこではありません。従って、道具を使うことを禁止することは本質的問題解決には至りません。
道具を使う人の意識・倫理観・リテラシーに難があるからトラブルが発生するということを理解すると、トラブル発生の原因が見えてきます。原因が見えてくれば対策も見えてきます。
LINEでトラブルが起こるとLINEの利用を禁止したり、規制したりしようとしたりしますが、根本的な問題解決方法としては誤りです。
全ての問題は使う人の道具の使い方に起因しており、トラブルを引き起こすのは使い方次第であるという観点から、防止策や指導をしていくことが大切なことです。
いじめ 人権相談窓口
早期発見、早期対応が早期解決の第一歩です。悩んだら迷わず相談を!
いじめ相談、子供の人権相談窓口を紹介します。
情報モラル教室や家庭教育学級でネットトラブルの講話をさせていただくさいによくいただく質問の一つが「相談窓口がどこにあるかわからない」ということです。
「後日情報を学校に共有してお伝えしますね」という対応が続いたので、整理した情報を掲載しておきます。
犯罪性が高い事案は即警察への相談の方が解決が早い場合もあります。まずは最寄りの警察署で構いませんが、どのような事案であるかを文章等で整理しておくことや、証拠があるのであれば証拠を持参するとスムーズな対応につながります。
主な相談窓口
■最寄りの警察署の探し方
※犯罪性が高い場合、直ぐに最寄りの警察署へ相談を!
○東京都の最寄りの警察署を探す場合
・「警視庁 警察署一覧」で検索
・【警察署名】から探す場合
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kankatu/kankatsu.htm
・【市町村名】から探す場合
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kankatu/kensaku.htm
・【地図】から探す場合
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kankatu/psmap/psmap3.htm
○神奈川県の最寄りの警察署を探す場合
・「神奈川県警察 警察署一覧」で検索
・【警察署名】から探す場合
http://www.police.pref.kanagawa.jp/idx_ps.htm
https://www.police.pref.kanagawa.jp/ps_site.htm
・【市町村名】から探す場合
https://www.police.pref.kanagawa.jp/ps_addres.htm
・【地図】から探す場合
https://www.police.pref.kanagawa.jp/ps_map.htm
○埼玉県の最寄りの警察署を探す場合
・「埼玉県警察 警察署一覧」で検索
・【警察署名】から探す場合
http://www.police.pref.saitama.lg.jp/kenke/kesatsusho/index.html
・【市町村名】から探す場合
http://www.police.pref.saitama.lg.jp/kenke/kesatsusho/shichoson.html
・【地図】から探す場合
http://www.police.pref.saitama.lg.jp/kenke/kesatsusho/chizu.html
○千葉県の最寄りの警察署を探す場合
・「千葉県警察 警察署一覧」で検索
・【警察署名】から探す場合
https://www.police.pref.chiba.jp/police/police_department/
・【地図】から探す場合
http://www.police.pref.chiba.jp/police/police_map/
ネットいじめの理解
下記の表はネットいじめと従来のいじめを比較したものです。
ネット上で行われるかどうかの違いだけではなく、ネット特有の問題点、対応が必要なこともあります。
ネットと従来のいじめの違いで一番特徴的なことは24時間365日、場所を選ばずに攻撃を受ける環境にあり、あっという間に深刻な事態に陥る危険性があるということです。無料の通信アプリかつクローズドの環境でのやり取りができるツールが普及したこともあり、問題発見が遅れるケースが多いようです。
従来はいじめの現場、対象者から離れ、自宅に戻れば少なくとも物理的に安全な場所が確保されていました。しかし、ネットいじめの場合は、ネット接続環境が身近にある限り、どこにいてもいじめられる環境になってしまいます。
対策として大人は安易に携帯やスマートフォンを取り上げてしまおうとしますが、子供にとっては他の人とのつながりも断絶されると感じることもあるため、そういう気配を感じると「いじめられていない」「いじめなどない」ということで反発することもあります。また、取り上げたところで自分が見ていないところでいじめ行為が行われ続けているという不安感からは逃れられません。加害者の行為そのものを止められなければ解決はありません。行為を止めるためには、加害者がいじめの犯罪性や人権問題という認識をし、心から反省しなければなりませんが、そのような指導がどの程度行われているでしょうか。頭ごなしに怒り、形式的に被害者に頭を下げさせたとしても、加害者の本質的な反省がなければ繰り返します。酷くなる場合もあれば、対象を別の子に変えて行うということもあります。
いじめを理由に転校などして物理的に離れたとしても、転校先にいじめられていた子供の情報がいじめをしている人たちによって拡散され、転校先でもいじめの対象とされるようなことも起こっています。これは加害者側が罪悪感を感じていないことにより起こります。
「道徳心の欠如」と一言で片付けるのは簡単ですが、その欠如した道徳心を育むのは一朝一夕では叶いません。罪悪感を持たない加害者は、いじめを娯楽の一つとして捉えている場合もあり、加害者の意識に根気強く働きかけることが求められることもあります。家庭に問題がある場合も多いため、加害保護者との関係性も重要になります。
被害者の身(安全)を守ることが第一ですが、同時に加害関係者者対応も重要なことであることを理解することが必要です。
【表】ネットいじめと従来のいじめの比較
「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由
教職員向けの人権研修で使わせていただいている漫画「『死ぬくらいなら辞めれば』ができない理由」と作者インタビューを紹介します。(※作者のイラストレータ汐街コナさんの許諾を得た上で参加者に配布させていただいています)
同タイトルの漫画は、自殺する人の心理を明確にわかりやすく表している漫画です。自殺を考えたことがある人には物凄く理解できる内容ではないでしょうか。これは自殺というものを考えたことがない人には理解できない感覚だと思います。理解はできなくても仕方がないのですが、自殺を考えてしまう人はこのような感覚に陥っているということは知っていただきたいですね。
<漫画と作者インタビュー>
過労自殺「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 漫画作者に聞く - withnews(ウィズニュース)
<作者のwebサイト>
大手広告代理店新入社員の過労自殺(パワハラ等の疑いもありますが)やいじめによる児童生徒の自殺が報道されると「死ぬくらいない・・・」という論調が必ずと言っていいほど出て来ます。しかし、その考えができるくらいなら自殺などしません。考えられない心理状態になるから人は自殺するのです。そういう世界があるということを知るということが第一歩です。
教職員向け研修の際、この漫画に興味を持ってくださった先生が何名かいます。恐らく、漫画の主人公の心理状態が理解できるのか、そのような心理状態に興味を持つ人、人の死に意識が向く先生だったのでしょう。
一方で、「ふーん」という反応しか示さない先生もいます。既に数回このネタを使って研修実施をさせていただきましたが、「ふーん」という反応の方が多いかもしれません。自殺をするほど悩むということがないある意味幸せな人生を送っているのかもしれません。
後者の人からすると自殺を考えたり、自殺してしまう人のことは理解できないと思いますが、自殺を考えるほど悩んでいる人の相談相手がそういう人だった場合、最悪の結果になる可能性もあります。
相談相手という立場になる人は、少なからず相談者の心理状態には興味を持っておいてもらいたいものです。
理解できなくても構いません。そのような人もいるということを知っていただき、その人の対応法についても知っておいていただきたいものです。
それにより救われるかもしれない命があるのですから。